名古屋高等裁判所 昭和29年(う)951号 判決
職権を以て審査し原判決を査閲すると、同判決は被告人は昭和二十五年一月二十二日頃名古屋市千種区都通り二丁目二十八番地の元住居に於て物品税法所定の課税物件であるラジオ聴取機の部分品「ダイヤル」の製造販売業を開始するに当り政府に対し同法所定の営業開始の申告をしないで其の頃から昭和二十八年三月十三日頃迄の間に右元住居並肩書現住居に於て前記ダイヤル合計約五千百十個を製造したとの犯罪事実を認め、之を一罪と認定し乍ら之に対し、被告人が本件無申告製造行為を開始した昭和二十五年一月二十二日頃当時施行されていた法律である昭和二十九年法律第四十六号附則第十六項、昭和二十八年法律第四十一号附則第七項、昭和二十五年法律第二百八十六号附則第七項に依る改正前の物品税法第十五条第一条第一項第一種戊類第五十六号第十八条第一項第一号、昭和二十五年政令第三百六十号附則第七項に依る改正前の物品税法施行規則(昭和二十四年政令第四〇七号)別表第一種戊類五十六号を適用して処断していることが明白である。而して原判決認定の如き同一罪質で且同一罪名に觸れる無申告製造行為を単一の意思に基き反覆且継続して為した時は其の行為は包括的に観察して一罪を構成すべきものと解すべきであるから之と同一の見解に立脚した原審の事実認定は正当であるが、かかる場合その犯罪行為が継続している間に法令の改正が行われた場合は其の犯罪行為全部に対し改正後の法令を適用すべく且それで足りるものと解すべきであつて、改正前の法令を適用すべきものではない。今本件について之を観るに被告人の原判示無申告製造の所為は、昭和二十五年一月二十二日頃から同二十八年三月十三日頃迄に亘り犯された犯行であるが、其の中途に於て昭和二十五年十二月二十日法律第二百八十六号に依り物品税法第十八条第一項第一号が改正され、又同日政令第三百六十号に依り別表第一種戊類が改正され、右各改正法令は昭和二十六年一月一日から施行されたので、前記本件所為は右改正の前後に跨り犯された包括的一罪であるから、此の所為に対しては、総て右改正後の法令を適用して処断すべきである。然るに原判決が前叙の如く其の所為の一部が改正前の法令の当時に犯されたとの理由により其の全部に対し改正前の法令を適用処断したのは結局法令の適用を誤つたもので、右違法は判決に影響を及ぼすものと謂わなければならないから原判決はこの点において破棄を免れない。
(裁判長判事 小林登一 判事 栗田源蔵 判事 石田恵一)